「AIだけで、YouTubeショートをどこまで作れるか」を試している個人開発の記録です。今回は、原作ファンによる非公式の紹介(オマージュ)として、鳥山明『DRAGON BALL』(集英社)のナメック星編の序盤を、1分09秒の棒人間アニメにしました。人がやったのは、題材の一覧を設定ファイルに書いたことだけです。台本、ナレーション、映像、効果音、公開前チェック、YouTubeへの投稿までをパイプラインで自動実行しています。
作った動画の概要
内容は、地球のドラゴンボールが使えなくなり、悟飯・クリリン・ブルマがナメック星へ向かうところから、フリーザ一味・ベジータとの三つどもえのボール争奪戦が最終局面に入るところまでです。ずんだもんの声で、場面ごとにテンポよく紹介していきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長さ | 1分09秒 |
| 形式 | 縦型 1080×1920・30fps(YouTube ショート) |
| 場面数 | 12 |
| フレーム数 | 4145 |
| 効果音の数 | 47 |
| 登場人物 | 孫悟飯、クリリン、ブルマ、孫悟空、ベジータ、フリーザ、ドドリア、ザーボン、デンデ、ナメック星人、最長老 |
仕組み:工程ごとの役割と使った技術
全体はPythonで書いており、Google Cloud の Cloud Run Jobs と Cloud Scheduler で定期実行しています。ローカルでも同じコマンドで動くようにしてあるので、デバッグはローカル、本番はクラウドという使い分けです。
1. 台本づくり(Claude API)
Claude API(claude-opus-5-5)の構造化出力で、場面ごとにナレーション・字幕・読み・登場人物の見た目・動き・カメラ・効果をJSONで出力させます。映像側はこのJSONだけを見て描くので、台本が映像の設計図を兼ねています。
2. ナレーション(VOICEVOX)
VOICEVOX(ずんだもん)をDockerで動かし、字幕1行ずつ音声合成しています。1行ごとに音声の長さがわかるので、そのまま字幕の表示時間に使え、字幕と声のズレが起きにくくなります。
3. 映像(自作の棒人間レンダラー)
Pythonとcairoで作った棒人間レンダラーで描いています。関節角度でポーズを定義し、パンチ・気功波・飛行など28種類の動きと背景・エフェクトを1コマずつ描画し、FFmpegで動画にします。
4. 効果音・字幕
- 効果音:NumPyで波形から合成(外部素材は使っていません)
- 字幕・見出し:Pillow と Noto Sans CJK
5. 公開前チェック(Claude)
Claudeがサムネイル画像と台本を見て、原作との事実関係・権利・YouTubeポリシーを審査します。問題があれば台本を自動で直して作り直す流れです。
工程別の制作時間
| 工程 | 時間 | Claude呼び出し回数 |
|---|---|---|
| 台本づくり(Claude) | 2分03秒 | 1 |
| ナレーション音声(VOICEVOX) | 38秒 | 0 |
| 棒人間アニメの描画・動画化 | 8分59秒 | 0 |
| 公開前チェックと修正(Claude) | 10分54秒 | 3 |
| YouTube への投稿 | 0秒 | 0 |
| 合計 | 22分34秒 |
一番時間がかかったのは公開前チェックと修正で、次が描画です。台本そのものは2分03秒で出てくるので、「作る」より「確かめて直す」ほうに時間を使っている構成になっています。
費用
| 工程 | 入力トークン | 出力トークン | Claude費用 |
|---|---|---|---|
| 台本づくり | 4128 | 13812 | $0.29(約44円) |
| 公開前チェックと修正 | 20980 | 11209 | $0.31(約46円) |
| 合計 | $0.60(約90円) |
円換算は1ドル=150円です。台本は入力が少なく出力が多い(場面ごとの細かい指定をJSONで書き出すため)、チェックは画像と台本を読ませるので入力が多い、という違いがはっきり出ました。
AIのチェックで見つかった問題と直し方
公開前チェックは2回分の記録があり、どちらも判定はOK(重大な問題なし)でしたが、warnレベルの指摘がいくつか出ています。
1回目の指摘
- 事実関係:デンデを救い出す場面で、原作ではクリリンも加勢しているという指摘。完成版のナレーションは「悟飯とクリリン」が救い出す形になっています。
- 権利表記:タグに「ずんだもん」が入っているので、VOICEVOXの利用規約に沿って概要欄にクレジット表記を入れること。
- 見た目:サムネイルでザーボンの長髪が見えず、ベジータも悟飯・悟空と同じ髪型で見分けにくい。
2回目の指摘
- 時系列:ベジータがボールを奪う場面とザーボンへのリベンジの順番が原作と少し違う。「一方」でつないでいるので重大ではないが、並べ替えるとより正確になる、という内容。
- 補足:最長老による潜在能力の解放がクリリンだけになっているが、原作では悟飯も(このパートより後で)力を引き出される。次回以降で触れると整合が取れる。
人物の取り違えのような事実の指摘を、AIが自分で拾って台本に反映できたのは大きな収穫でした。一方で、2回目の時系列の指摘はwarn扱いでOK判定になったため、完成版にはその順番のまま残っています。warnをどこまで自動で直すかは、今後のルール設計の課題です。
やってみてわかったこと・今後
- 台本をJSONにすると後工程が楽:見た目・動き・カメラまで台本に入れておくと、レンダラーは描くだけで済みます。
- チェック工程に一番時間がかかる:22分34秒のうち10分54秒がチェックと修正。品質を担保する部分にコストが寄るのは、むしろ健全だと感じています。
- 棒人間はキャラの見分けが課題:髪型だけでは区別しにくいという指摘があったので、色やシルエットの差を強める必要があります。
- warnの扱い:OK判定でも残る細かいズレを、自動修正の対象にするかどうかを決めていきたいです。
まとめ
題材を設定ファイルに書くだけで、台本・声・映像・効果音・公開前チェック・投稿までが自動で進み、1分09秒のショートが22分34秒、Claude費用約90円でできました。完璧ではなく、時系列のズレやキャラの見分けにくさは残っていますが、それをAI自身が指摘してくれるところまでは来ています。次回以降も、チェックと修正の精度を上げながら続けていきます。
※動画は原作のファンによる非公式の紹介動画です。登場人物は棒人間で表現しており、原作の絵・音声は使用していません。音声: VOICEVOX:ずんだもん




